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「小さな棺〜子捨て子殺しの系譜」

(C)黒猫館〜「月光書影閲覧室」〜より

 数ある片山健装丁本のなかでも最も人気が高<、かつもっとも入手困難なのが本書。一説では回収破棄 されたから出ないという説もある。
 さて本書の著者「南川泰三」という人物についてまったく詳細は不明。演劇関係に近い人物という噂がある程度。そういわれてみれば確かに状況劇場張りのパセティックな文章を書くひとだという印象がある。
 さて本書のテーマは「子捨て、子殺し」。「死児を抱いて唄う女」、「ロッカーは赤子たちの納骨堂」、「婁の河原幻想」 「児童暗黒史年表」など気の滅入りそうな章がずらりと並ぶ。これにあの片山健の挿絵。
 ツボにはまりすぎているではないか?これもまた傑作本の最も重要な要素である「内容と装丁の一致」が見事に実現した例といえよう。」



(C)黒猫館〜「黒猫図書館」〜より

 この本の作者の南川氏の詳細は不明。まず目次を見てみよう。

  ・死児を抱いて唄う女
  ・ロッカーは赤子たちの納骨堂
  ・おまえ売られてどこへ行<
  ・大地に戻されし子等
  ・宴の河原幻想
  ・児童暗黒史年表

 いかがであろうか?目次をみただけで「暗さ」のオーラが立ち上ってくるようではないか?
 しかも作者の南川氏は興味本位でこういったことを書いているのではない。「序文」から引用しよう。

 「死児たちは寄り集まって、じりじりと崩れ落ちてゆく時代の論理の、道徳の、ありとあらゆるものの晩鐘を打ち鳴らす。親たちの不安と苛立ちは死児達のあの世からの贈りもの。いまこそ、私たちは殺されていった子供たちの復権をまともに受けて、子捨て、子殺しの時代に終止符を打つか、あるいは時代とともに自滅してゆくかの瀬戸際に立だされているのだ。」(22p)

 おわかりであろうか? 俗な言い方でいえば南川氏は「マジ」なのである。本気なのである。本気で「子捨て・子殺し」の問題を自分の問題として捉え、苦悩しているのだ。ゆえにこの本を最近流行の「トンデモ本」などと扱うものは、それこそ死児の思念で呪殺されることであろう。
 もう一つ、この本の「根暗度」のボルテージをあげているのが、片山健の挿画である。カバー・見返し・扉・本文中四枚の片山健の挿画が挿入されているが、これがまた全て「根暗」を極めた陰惨なイラストとなっている。これは『美しい日々』(片山健第一作品集)の時代から序序に陰惨さを増していったピークの作品群といえよう。時代的には『迷子の独楽』(北宋社・第三作品集)の時代の絵であるが、『迷子の独楽』のどの絵よりもこの『小さな柩』の絵の暗さは深い。
 まさに南川泰三と片山健の根暗パワーがあたかもジャズのセッションのごとく共鳴し、どす黒い暗さの渦が立ち上っているのだ。

 最後に古書的なデータを示す。この本は片山フリークの連中が競って買うため、マニアの世界では非常に人気が高い。しかもめったに古書店に並ぶこともない。一説では「回収・焼却」処分になったからでないのだ‥・という説もある。これも死児たちの呪いが資したものであろうか?

 奇跡的にでれば、この種の本の専門店では15000〜25000円程度は出さないと買えない。
運良<ブック・オフ的古書店で拾う場合もあるだろうが、こんどは「帯」が難しい。この本の帯付き完本は本当に入手困難なのだ。
 しかし古書などという本来「暗い」ものを好むマニアならやはり入手しておきたい一冊であろう。10年かかるかもしれないが、マニアの方は探してください。



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「グッバイ艶〜引き裂かれた日記〜」

 ムツゴロウシリーズをはじめ、ドラマ・戯曲・ドキュメンタリーなど、数多くの作品を手がけた作家、南川泰三が25年に及ぶ妻「艶(えん)」との壮絶な夫婦の憎愛を描いた衝撃の問題作。

 「酒を飲ませれば誰とでも寝る女」この一言から始まった男と女の空中ブランコ。

 酒を愛し、激しく、奔放に生きた「艶」。六回の自殺未遂の末、ついに酒で命を縮めた艶。

 「艶は何故にこれほど自虐的な生き方をしたのか?」遺された日記から妻の過去に分け入る夫。そこで知った意外な妻の素顔とは?

 「お酒やすてきな男や、すてきな喫茶店で注目される時や、死ぬほど好きな男に一日中、酔っていたかった。熱狂的に酔い、そして生き、絶望にさえ酔いたかった」

 艶の死後、下着の中に隠されていたノートの切れ端、それは妻が夫に仕掛けた最後の愛の罠だった。

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